紀ノ川の北岸に位置する和歌山市木ノ本は、もともと古墳などもある古い土地柄で、東大寺の天永二年の文書によれば、今から千三百年前に奈良大安寺の手によって開拓され、その後、東大寺の寺領となったが、その時既に八幡宮を守護神としていたことが記されている。
木ノ本の獅子舞は、神に対する祈りと感謝の心をこめて行なわれる神事芸能で、いろいろな障害をのりこえながら今日まで継承されてきたものである。毎年十月十五日を過ぎた次の土曜日と日曜日に、木本八幡宮に奉納される。
獅子は雄獅子で、青年二人が胴衣に入って演ずる勇壮活発な獅子舞である。地上での舞とだんじり上での舞とがあって、特にだんじり上でのアクロバット的な舞が有名である。
地上での舞は、蓆八枚を敷きならべ、その上で竜の舞、孔雀の舞、鶴亀の舞、ねんころり、居眠り、股ねずりなどを演ずるもので、それぞれの姿を抽象化している。
だんじり上での舞は、地上約5mの高さのところに渡した二本の青竹の上で舞うもので、舞手には相当の修練が要求される舞である。
その内容は、百獣の王たる獅子が、生まれたばかりの子獅子を谷底へ蹴落とす形や、這い上がってくる我が子を待ちながら谷底をのぞく姿を演出したもので、そうしたを何回も繰り返し、やがて元気な我が子の姿を見て安心し、どっかりと座り込んで居眠りをする。
目が覚めると威勢よく反り返って再び舞い始め、最後は静かに梯子を降りてくるところで終わる。
以上の舞に要する時間は約三十分。

資料

第37回民俗芸能大会のポスター

2004年

2005年

2007年

2009年